学校医の配置義務の範囲は?―法律から読み解く学校医の職務範囲

  • 2025年6月4日
  • 2025年6月2日
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根拠法令:学校保健安全法 第23条

学校保健安全法により、すべての学校には「学校医」を置くことが義務づけられています。これらの専門職は医師の中から任命または委嘱され、保健管理に関する専門的事項に従事します。

第二十三条 学校には、学校医を置くものとする。
4 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師は、学校における保健管理に関する専門的事項に関し、技術及び指導に従事する。
5 学校医、学校歯科医及び学校薬剤師の職務執行の準則は、文部科学省令で定める。

以下は、学校教育法 第1条に基づき、「学校医の配置が義務付けられている学校」の一覧です。


【学校教育法第1条に規定される学校】

(=学校保健安全法で「学校」と定義され、学校医の配置義務がある)

  1. 幼稚園
  2. 小学校
  3. 中学校
  4. 義務教育学校
     ※小・中一貫教育を行う学校
  5. 高等学校
  6. 中等教育学校
     ※前期課程(中学校相当)・後期課程(高等学校相当)を含む
  7. 特別支援学校
     ※聴覚障害、視覚障害、知的障害、肢体不自由などの児童生徒対象
  8. 大学
  9. 高等専門学校

学校教育法
第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。


学校医の主な職務内容

文部科学省令「学校保健安全法施行規則」第22条により、学校医の職務は以下のように定められています。

  1. 学校保健・安全計画の立案に関与
  2. 環境衛生の維持・改善のため、学校薬剤師と連携し指導助言
  3. 児童生徒等への健康相談
  4. 保健指導への関与
  5. 定期健康診断の実施
  6. 疾病の予防処置
  7. 感染症・食中毒の予防と対策への助言・処置
  8. 校長の求めによる救急処置
  9. 教育委員会や設置者の要請による健康診断
  10. その他必要に応じた保健管理の指導

また、学校医は職務に従事した内容を「学校医執務記録簿」に記録し、校長に提出する義務もあります。

学校保健安全法施行規則
(学校医の職務執行の準則)
第二十二条 学校医の職務執行の準則は、次の各号に掲げるとおりとする。
一 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること。
二 学校の環境衛生の維持及び改善に関し、学校薬剤師と協力して、必要な指導及び助言を行うこと。
三 法第八条の健康相談に従事すること。
四 法第九条の保健指導に従事すること。
五 法第十三条の健康診断に従事すること。
六 法第十四条の疾病の予防処置に従事すること。
七 法第二章第四節の感染症の予防に関し必要な指導及び助言を行い、並びに学校における感染症及び食中毒の予防処置に従事すること。
八 校長の求めにより、救急処置に従事すること。
九 市町村の教育委員会又は学校の設置者の求めにより、法第十一条の健康診断又は法第十五条第一項の健康診断に従事すること。
十 前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する指導に従事すること。
2 学校医は、前項の職務に従事したときは、その状況の概要を学校医執務記録簿に記入して校長に提出するものとする。


保育園における医師との違い

一方、保育園は学校ではなく福祉施設として、厚生労働省の所管となっています。したがって「学校医」という制度の対象外です。

しかし、児童福祉法関連の省令により、保育園でも**嘱託医(しょくたくい)**を置く必要があります。具体的には以下のような健康診断の実施が求められます。

  • 入所時の健康診断
  • 年2回以上の定期健康診断
  • 必要に応じた臨時健康診断

これらは学校保健安全法に準じた内容とされていますが、医師は学校医ではなく「嘱託医」として施設長に協力する立場にあります。

第十二条 児童福祉施設(児童厚生施設、児童家庭支援センター及び里親支援センターを除く。第四項を除き、以下この条において同じ。)の長は、入所した者に対し、入所時の健康診断、少なくとも一年に二回の定期健康診断及び臨時の健康診断を、学校保健安全法(昭和三十三年法律第五十六号)に規定する健康診断に準じて行わなければならない。
3 第一項の健康診断をした医師は、その結果必要な事項を母子健康手帳又は入所した者の健康を記録する表に記入するとともに、必要に応じ入所の措置又は助産の実施、母子保護の実施若しくは保育の提供若しくは法第二十四条第五項若しくは第六項の規定による措置を解除又は停止する等必要な手続をとることを、児童福祉施設の長に勧告しなければならない。


まとめ

比較項目学校(学校医)保育園(嘱託医)
所管官庁文部科学省厚生労働省
法的根拠学校保健安全法児童福祉法
役職名学校医嘱託医
職務内容保健管理、健診、感染症対策、救急処置など健康診断の実施、必要な勧告

学校医は、単なる健診担当ではなく、学校全体の保健計画や感染症対策など広範な分野で専門的な助言と指導を行う重要な職務です。今後も、学校医の役割に対する正しい理解と支援が求められます。


🏫 日本学校医会の取り組み:

常勤・準常勤の学校医の育成と普及

▶ 背景と課題

これまで多くの学校医は、非常勤かつ年数回の健診業務が中心で、
継続的な保健指導や感染症対応、精神・発達面の支援などが十分でないケースも見られました。

しかし近年、以下のような学校現場の変化により、より密接な関与が求められるようになっています。

  • 学校における安全意識の高まり
  • 児童生徒の心身の多様な健康課題(メンタルヘルス・生活習慣病・発達障害等)
  • 学校保健と地域医療・家庭の連携の必要性

常勤・準常勤的な学校医の特徴

日本学校医会が推進する「コミットする学校医」は、以下のような活動を日常的に担います。

活動例内容
保健委員会や職員会議への参加学校内での保健体制強化に貢献
教職員・養護教諭との連携ケース対応、情報共有、保健指導の実践
保護者への助言健康相談や感染症情報の提供
地域との連携地域保健・医療資源との橋渡し
学校保健計画への積極的関与保健教育や年間行事の企画など

今後の展望

日本学校医会は、自治体や教育委員会とも連携しながら、

  • 学校医の役割の明確化と専門性の向上
  • 学校医制度の勤務形態の多様化(準常勤制など)
  • 医学生や若手医師への学校医としてのキャリア教育

などに取り組んでおり、「学校に根ざした医師」の育成と制度改革が進められています。